『TOKYO DIME』所属プレイヤーの魅力を紹介するインタビューシリーズが始まります。第1弾は、2018シーズンプレミアで得点王に輝いた有明葵衣選手(#21)。外見はクールでも、ゲームではまさにファイター。「気持ちを前面に出すタイプ」と本人も言ってはばかりません。5人制バスケの実業団チームから、3×3に舞台を移しても躍動を続ける有明選手の“バスケ人生”について聞きました。
©TOKYO DIME
「自己表現の場」としての3×3
―バスケットボールを始めたきっかけは、兄の影響だった。
「小学生のときに、バスケをやっていた兄と一緒に練習するようになったのが最初のきっかけです。1on1(1対1)などを毎日のようにやっていました。小学4年生までは地域のスポーツ少年団、5年生からは部活動に入って続けました。
シュートが決まった時の高揚感が心地良かったことと、チームで勝った時の喜びが大きくて「楽しいな」と。憧れの選手は萩原美樹子(※1)さん。日本人で初めてWNBAプレイヤーになった選手です。シンプルに『WNBAってカッコいい』と思って、プロのバスケ選手を目指すようになってからは、もう一直線でした」
※1:1996年アトランタ五輪日本代表。97年シーズンにWNBAでプレー。現U-16、U-18、U-19女子バスケットボール日本代表ヘッドコーチ
―秋田経法大附高(現・明桜高)ではウィンターカップ(全国高校選手権)ベスト4、筑波大学ではユニバーシアード日本代表と第一線で活躍後、実業団Wリーグの『富士通レッドウェーブ』で2015年までの6シーズンプレーした。
「大学の時のポジションはガードだったのですが、点を獲るのも好きで、自分でもガンガン攻めてましたね。ただ、レッドウェーブに入ってからは、ガードとして仲間を生かすプレーにフォーカスし、コントロール重視でプレイするようになりました。実業団でのプレー期間は、できるところまでやるのではなく、最初から終わりを決めていたんです。というのも、ゆくゆくは教育に携わりたいという夢があったので。3年で試合に出場できなかったら辞める、出場できたら5年続ける、と。
結果的には6年間プレーしましたが、限られた時間をいかに充実させるか、という考えが強かったですね。だから怪我をした時も、最短で復帰できる方法を考えて、時にはドクターの指示を守らなかったり。(担当の)トレーナーは大変だったと思います(笑)」
Photo:Naoto Yoshida
―そして、Wリーグ引退後、3×3に出会う。
「自分からアプローチしたわけではなくて、最初のきっかけは、先輩の誘いだったんです。やってみたら『あ、面白い』と。点取り屋だった学生時代に戻ったような感覚で、自分の原点に帰れたような気がして。実業団の後半は、あまり出場機会もなくて、その悔しい思い出も含めて、3×3で自分を表現できているように感じたんです。純粋に、3×3という競技に好奇心をくすぐられたというか。TOKYO DIMEから声をかけられた時は、挑戦したいという思いが強かったですね」
試合を重ねて気づいた、3×3の魅力
―誘われるままに始めた3×3。特有の展開の速さに加え、有明は新たな競技の魅力に気づいていく。
「ハーフコートであることや、ショットクロックが短かいことで(※2)、プレー展開が速いというのも3×3の特徴ですが、私が感じる魅力は“ゲームメイク”にあると思っています。それは、TOKYO DIMEに加入して試合を重ねるにつれて感じるようになりましたね。交代要員を含む4人のメンバーで、どう戦っていくか、タイムアウトのタイミングも含めてゲームプランを選手だけで組み立てる。基本的には外からの指示はしてはいけないんです。
通常のバスケだと、監督がいて、ベンチメンバーがいて、(監督の)指示を仰いでプレーするのが一般的だと思いますが、より選手の裁量に委ねられているというのが、3×3の大きなポイントではないかな、と。メンバーだけで都度最善策をチョイスしてプレーすると、成功すれば嬉しいし、ミスに繋がれば悔しさも倍増。試合をつくる楽しさを100%感じることができるんですよね。自分たちで試合をつくることで自主性も磨かれますし、人間的にも成長できると思います」
※2:3×3競技規則参照
Photo:Naoto Yoshida
―自身の強みは得点力。しかし、課題と裏返しでもあるという。
「得点力は自分の強みです。5対5のバスケでは苦手だった外角のシュートも、3×3を始めてからトレーニングに力を入れて、試合でも積極的に打つようになりました。日本屈指のシューターであるオーナーの岡田(優介)さんからも手ほどきを受けています。
打てるシチュエーションを整えてくれる仲間のおかげでもあるのですが、試合での本数が増えてからは、相手のマークもタイトになって、代わりにドライブで切り込むという選択肢もとりやすくなってきました。ただ、シュートの成功率ももっと高めたいですし、攻めが得意な反面、ディフェンスがまだ弱くて、チームとしてはより強化すべきポイントではあると感じていますね」
“今”に全力で臨みたい
―誕生間もない女子チームの中でも豊富な経験を擁する有明。年長者でもある森本由樹(#11)とともにチームを鼓舞していく。
「よく森本さんと話しているのは、『良いときも、悪いときも常に声をかけ合おう』ということ。自分たちがブレたらチームもブレる。だから軸になる存在でいたいよね、と。でも、ブレブレの時もあるので反省も多いんですけど・・・(笑)。けれど、まだできたばかりのチーム。失敗もプラスに転換していくことを心がけています。
私自身も今TOKYO DIMEでプレーできていることにすごく感謝しているんです。実業団の終盤に出場機会が減ったとき、そのままバスケが嫌いになってもおかしくなかった。そうなっていたら、3×3もやっていなかったかもしれません。それでも腐らずに練習を積んできたからこそ、引退して3年が経っても体は動くし、今こうしてプレーできる環境にも恵まれている。チャンスが少しでも見えたら一歩踏み出すことって大事だなと感じています。
“今”に全力で臨みたい。引退してもプレーする場をもらえたからこそ、最大限のパフォーマンスを示していきたいと思っています」
Photo:Naoto Yoshida
(Text:Naoto Yoshida)