「誰かの“きっかけ”になりたい」。怖いもの知らずの成長株―#12加藤希恵<Kato Kie>―

“誘い”で始めたバスケはいつしか人生の一部に。「代打」で出場した第1回の『3×3日本選手権』から3年、トライアウトをただ一人突破し、『TOKYO DIME』に加入した加藤希恵選手。「同じ土俵に立つからには経歴は関係ない」と物怖じしない性格の加藤選手ですが、他方で自身を冷静に見つめています。

©TOKYO DIME


日本選手権を経て、掴んだPREMIERの舞台

―2015年シーズンより、『3×3日本選手権』等で活躍。『3×3.EXE PREMIER』女子カテゴリー開幕直前の昨年5月、唯一のトライアウト合格者としてTOKYO DIMEに加入した。

「元々、別のチームに所属してプレーしていたのですが、女子のPREMIERが開幕するということで、『挑戦するなら今だ』と思って。トライアウトを受けた後、しばらく時間が空いたのでドキドキしていたのですが、合格の通知を頂いた時は、素直に嬉しかったですね。(加入後)1ヶ月そこそこのタイミングで、試合に出場させてもらえるようになりました。

結果的に(2018年度は)総合優勝することができましたが、嬉しさと悔しさが半々ぐらい。というのも、PREMIERの試合に限らず、まだまだミスも多くて。自分のミスで試合の流れが変わってしまう。そんなことも多かったんですよね」

Photo:Naoto Yoshida


―TOKYO DIMEで自分にできることは何か。それは目下、模索中だ。

「5人制のバスケでは、自分がフィニッシャー(※1)になるという思いでプレーしていた部分もありました。今は、他にもポイントゲッターがいるので、その選手を生かすためのシチュエーションを作っていくことも意識しなくてはいけない。例えば、スクリーン(※2)を上手くかけるとか。

合わせて、スクリーンのような局面でのプレーから、次の動作をイメージすることができるようになれば、個人としてもチームとしてもプレーの選択肢が広がると思っています。『DIMEで自分ができることって何だろう』と、模索している最中ですね」
※1:パスを受けて最終的にシュートを放つ選手
※2:対峙する相手選手の動きを制するプレー。主にオフェンス時に味方の動きを補助する際に用いられる

人の輪が後押ししたコートへの復帰

―バスケを始めたきっかけは友達の誘い。そのまま大学までプレーすることになる。

「最初は、バスケをやる気はなかったんです。でも、中学校の友達に誘われて、やってみようかな、と。そのまま高校でもバスケ部で、県大会に出場できれば御の字というレベルでやっていました。

大学では続けるつもりはなかったのですが、受験の時に岡山の大学(倉敷芸術科学大学)から声がかかったんです。『インカレ(全日本大学選手権)を目指さないか』と。

結局は(インカレに)出場することはできなかったのですが、なぜ、大学でも続けようと思ったのか…。自分が必要とされていることが純粋に嬉しかったのかもしれません。なおかつ、今までより少し上の舞台を目指せる。未知数かもしれないけれど、せっかく話をもらったのだからやれるまでやってみようと」

©TOKYO DIME


―大学卒業後に競技からは引退し、就職。しかし、再度バスケへ気持ちが向いていく。重なるように、人の繋がりが後押しした。

「やっぱり、やりたいって思っちゃったんですよね。なぜ、そう思ったのかは明確には覚えていないのですが、仕事をしながら、時間がある時にバスケの観戦にも行っていて、ふと『やりたい!』と。自分でチームを探して、まずは5人制からリスタートしました。

3×3との出逢いは第1回の日本選手権がきっかけでした。後輩が出場するということで、観戦に行く約束をしていたんです。そうしたら、欠員が出て、急遽代打を頼まれて。私自身は、チームメイトの足を引っ張らないように…、という気持ちでしたが、結果は準優勝。嬉しかった記憶しかないですね。

それから第2回、第3回と同じチームでプレーして、(昨年の)第4回大会ではまた別のチームでプレーしました。バスケを再開したのも、3×3を始めたのもすべて人の縁。繋がりが重なって、今ここにいる。恵まれていると思います」

暗中模索。それでも「今が一番楽しい」

―同じ土俵に立つ限り、経歴は関係ない。そのメンタリティがモチベーションにもつながっている。

「3×3をはじめた時は、元WJBL(※3)のプレイヤーたちと同じコートに立つことへの不安もありました。でも、ふと誰かに言われたんです。『いちプレイヤーとしてコートに立っている限りは同じ選手。変に悲観的になって、自分を卑下するのは良くない』と。それを聞いて、自分にできることをやろうと。
※3:日本の女子バスケットボールトップリーグ

今はDIMEの一員として、堂々とプレーしなければいけないし、それに見合った努力もしなきゃいけない。そこに経歴は関係ないかな、と思っています。怖いもの知らずで負けず嫌い。それが自分の原動力かもしれません」

―TOKYO DIMEでのプレーを通じて、新しい自分に出会う。それは“面白さ”であり“課題”でもある。

「DIMEに入って、改めて自分ができないことも分かってきました。今までほとんど打ってこなかったロングレンジのシュートも打つようになったし、外角のディフェンスも意識しないといけない。5人制でのポジションはセンターなので、インサイドが定位置でしたけど、目まぐるしく展開が変わる3×3ではそんなこと関係なくて。やるべきことが明確になって、今が一番楽しいかもしれません。

もちろん、それは課題の裏返しでもあるのですが、できることが増えれば、さらに楽しくなるはず。可能性を可能性で終わらせないように、頑張りたいです」

―目標は、誰かの“きっかけ”になることだという。

「DIMEに加入して、PREMIERリーグでプレーしている時点で、『奇跡だよ』って言われるんです(笑)。だからこそ、私が挑戦し続けることが、私の周囲の人や、バスケが好きな人が、『3×3をやってみたい』と思えるきっかけになればいいと思っています。

そのためには、ただDIMEに所属しているだけでは意味がない。言った通り、私自身はこのチームで何ができるのか模索している状況で、まだ『3×3の面白さ』を上手く表現できていないと思っていて。現状を打破した先に、それを語れる自分がいるような気がしています」

Photo:Naoto Yoshida

(Text:Naoto Yoshida)

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