ビジネスとスポーツの共通点は“信頼関係”。仲間を生かし、勝利を呼び込む―#20岩下達郎<Iwashita Tatsuro>―

相手選手の前に立ちはだかる205cmの体躯。大学時代に5人制バスケで日本一を経験した岩下達郎選手は、過去2年、悔いの残るシーズンを過ごしてきたといいます。大手総合商社の社員として、ビジネスと3×3の二足のわらじを履く岩下選手に、プレイヤーとしての強みと葛藤について聞きました。

「勝負の年」に向け、体をイチから作り直す

―大手総合商社に勤務しながら、2014年『3×3.EXE PREMIER』初年度に『TOKYO DIME』のメンバーとして参戦。初代王者の一員に。その後、2年間の海外駐在を経て、2017年シーズンよりチームに復帰した。

「会社の業務上、15年、16年は南米で勤務していました。駐在していた国はバスケが盛んではなく、プレーができなかったので、他のスポーツをしていたんですね。帰国後に再度DIMEからオファーを頂いてチームに復帰したわけですが、初年度と比べて格段に競技レベルが向上していて。2年間のブランクがあった僕にとって、相当厳しいシーズンでした。

結果的には、総合優勝を勝ち取ることはできたものの、無理がたたって両膝半月板の手術を受けることになったんです。オペを経て、昨年のシーズンインには間に合ったのですが、足をかばいながら、騙し騙しプレーするような状況で、振るわないシーズンになってしまって。その反省もあり、昨シーズンオフから今にかけて、体づくりをイチからやり直してきました」

Photo:Naoto Yoshida

―悔いの残る1年を経て、2019年は「勝負の年になる」と意気込む。

「僕が3×3をプレーしている大きな理由として、オリンピックに出場したいという思いがあります。もともと僕は、“オリンピアン”と“経営者”という2つの夢を持っていて、大学を卒業する際に、バスケの道とビジネスの道、どちらに進むか悩みました。最終的に、後者を取ったわけですが、会社員になってからもバスケは継続していて。そんな折に、3×3のプロリーグが立ち上がるということで、(オーナーの)岡田(優介)さんから声をかけて頂いた。それが3×3に触れるきっかけでした。

その後、海外駐在から帰国する間際に、3×3がオリンピック種目になるという知らせが届いて、帰国後にチームから再度オファーをもらった。自分の中で何かが繋がった感覚があったんです。ただ、今は日本代表の候補からも外れている状況で、オリンピック出場は今年のDIMEにおけるパフォーマンスにかかっていると考えています」

攻守における葛藤、克服に向けた出発

―慶應義塾大学在学中は、ゴール下の攻防で圧倒的な存在感を示し、インターカレッジ(全日本大学選手権)優勝など実績を残してきた。しかし、5人制バスケとは様相の異なる3×3において、自身の“強み”については時として悩むこともあるという。

「5人制のバスケをしていた頃の僕は、ディフェンスでもオフェンスでも、インサイドで終始することが多かったので、アウトサイドでの攻防自体の経験が乏しかった。外国人選手の中には、インサイドだけではなく、外からのカットインを得意とするプレイヤーも大勢いますから、そのような攻撃を受けた時に、対応が追いつかなかったんです。つまり、自分の中で得意だと考えていたディフェンスも、エリアが広がると通用しなかった。

他方で、これまでは身長もフィジカルの強さもある外国人選手とゴール下付近でマッチアップすることが多く、どちらかといえばディフェンスに注力する立場でした。でも、コートに立つのが3人という中で、点数も取れないと苦しいというのは明白。つまり、ディフェンス、オフェンス双方で苦境に陥っていたように思います。今では課題が明確になっているので、ディフェンスだけでなくオフェンス、特にシュートセレクションの多様化も意識して、トレーニングに励んでいます」

©TOKYO DIME

―多忙を極める業務と並行して時間をやりくりし、体を追い込む。ゲームにおける自らの立ち位置を把握し、役割を見出してきた。

「得点力の強化を図る一方で、僕自身は個人のスキルで突破できる選手ではないので、味方の特徴を把握して、オフェンス時にどうアジャストしていくべきか、どんなスペースを作れば味方がプレーしやすいか、ミスした時のフォローをどうするか、その辺りを念頭においてプレーしています。

チームメイトの力を最大限引き出せるような環境をゲームの中で作り出していくことに、特に自分の価値を見出していきたいと考えていますね。チームで決めたルールに即して、そこから外れたら逐次修正を加えて、チームが主導権を握るためのアシストをしていく。そのために、目の前の自分の役割を一つ一つこなしていく、そんなイメージでしょうか」

ビジネスマンとアスリートの経験は両輪を成す

―勤務では、ひと月の内1週間を国外で過ごす時もあるという。しかし、国際ビジネスの最前線で培った能力は、3×3のプレーと無関係ではない。

「相乗効果はあると思いますね。ビジネスを前に進める上では、一人ではなく、周囲の人たちとのチームワークになることが多いですよね。周囲を巻き込む上で大切な要素は、個々人の情熱だったり、“背中で見せていく”という行動力だったりすると思いますが、それはスポーツにも通じるはず。組織をマネジメントする時の本質はスポーツとも共通している部分はあると感じています。その意味では、ビジネスとスポーツの経験は相互に生かせると思いますね」

―ビジネスとスポーツの共通点は「信頼関係」。周囲を生かすプレーを通じて、岩下は存在感を発揮していくつもりだ。

「信頼関係を築くことは何事においても大事ですよね。海外で仕事をしていると、当然外国人のスタッフと共に仕事をするわけです。文化や言葉の違いはあれども、相手を敬う気持ちがあれば、向こうも気持ちを返そうとしてくれる。

DIMEに関しても、外国人の選手が所属しているし、メンバーの入れ替わりもあるので、新しくジョインしたプレイヤーと信頼関係を築くことは、ひいてはDIME自体のパフォーマンスにも関わってくる話であり、仕事を通じて培ってきたスキルが生かせる場でもあると考えています。チームメイトとの信頼関係を密にして、プレーでは味方を生かす。チームに不可欠なピースだと思ってもらえるようにゲームに臨みたいです。『岩下がいないとダメなんだ』と」

Photo:Naoto Yoshida

(Text:Naoto Yoshida)

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